サウジアラビアの文化と伝統に触発されたオブジェクトを用いたこのマルチメディア・インスタレーションは、光と彫刻を融合させ、CGのような景色を作り出す「View Tracing」シリーズの最新作です。世界最大規模のライトアートフェスティバル
「Noor Riyadh」のために制作された本作では、リサーチに基づきサウジアラビアや中東地域の象徴的な要素であるハヤブサ、マブカーラ(香炉)、ダラー(コーヒーポット)などを選定し、それらを3Dモデル化し、3Dプリンターで具現化したオブジェクトを制作しました。これらのオブジェクトは、味覚、嗅覚、聴覚といった五感を表しています。またイスラーム幾何学模様を基にした構造物が空間全体に配置されており、これらは上から見ると模様となるように設計されています。
これらのオブジェクトや構造物は、蛍光色の糸でポリゴン状の輪郭が描かれ、紫外線の照射によって発光することで、幾何学的かつ視覚的にCGのような世界を構築します。本シリーズの過去作ではグリッド状の輪郭も使用されていましたが、本作ではサウジアラビアの最初の国家の首都であったディルイーヤの伝統的な家屋に見られる三角形の模様のみを使用しています。これは視覚情報を基本的な形状やフォルムへと単純化して捉える人間の脳の特性とも深く結びついています。
鑑賞者は迷路のような複数の通路が張り巡らされた暗闇の空間に誘われ、紫外線の下で光を放つオブジェクトを鑑賞し、現実には存在しない香りや音、味の記憶が視覚と交錯し、現実と仮想の境界の中で感覚を揺さぶる新たな体験を創出します。
MDF、3Dプリント樹脂、糸、ピン、UVライト
Noor Riyadh 2024 [JAX District・リヤド、サウジアラビア] 2024